独立を経てから転職したら給与が5倍水準に

私はあまり給与に対して関心がありませんでした。仕事の内容を優先していたからです。たとえ給与が低くても、仕事が面白く、将来の自分に役に立つと思えばそれで満足でした。それが一変したのは、他人の給与を知ったときでした。自分より能力的に下だなと思っていた人の給与が、自分より高いと知ったときのショックはとても大きいものがありました。

なぜ会社はこんな査定をするのか、信じられないという思いと、疎外感に悩みました。それからは給与のことが頭を離れなくなり、少しでも上げたいという思いにとりつかれたのです。ところが給与も賞与もなかなか上がりませんでした。多少上がっても、翻って周囲の人たちの昇給昇進は早く、離されていくばかりでした。仕事にも身が入らなくなりました。それで思い至ったのは、もう会社を辞めるしかないということでした。ただ、辞めて他社に移ることは考えませんでした。移っても同じだろうという思いがあったからです。

それで私が考えたのは、辞めるまでの間に資格を取得して、自分で仕事をしてみようということでした。もともといずれは独立したいという気持ちで仕事をしていましたので、それが早くなっただけという風に思うようにしました。とはいっても独立はなかなかふんぎれるものではありませんでしたから、結果として給与の低さにせっつかれて背中を押されたような格好でした。首尾よく国家資格の方は予定通り取得出来ましたので、ライセンスが行使出来る時期を見計らって会社は辞めました。

独立後は営業から何からすべて自分でしないといけませんが、それはあまり苦になりませんでした。独立とはそういうものだと聞いていましたし、赤い小便が出るくらいやらないと飯さえ食えないのが独立だという認識でした。しかし、軍資金があまり潤沢でなかったことから、時間がないというあせりは強く、儲からない仕事に手を出すことも再三でした。おかげで実収入は、給与が低いと嘆いて務めた前の会社の収入よりさらに低くなり、その点では何をしているのか分からない感じでした。それでも、他人との比較がされないために、仕事以外のことで精神的なストレスを感じる必要がないので、会社を辞めて独立した後悔はありませんでした。そんなことをして何とか自転車操業をして2年ほどした頃、取引先となってくれていた会社の社長から呼ばれ、社員として来ないかと誘われたのです。その会社は私が以前勤務していた会社とは比較にならないほど規模も大きく、また仕事内容もはるかに充実していました。また、社長が出してきた条件も魅力的で、年収は前の会社の2.5倍ほどでした。独立後の実収入の3倍程度だったでしょうか。

金銭的には迷う必要が何もないくらいでしたが、悩んだのは、独立を辞めて再びサラリーマンに戻る安易な選択が、果たしていいのかどうかでした。社長は仕事をしながら考えてくれればいいといってくれていたので、半年ほどは宙ぶらりん状態で過ごしました。半年で事業が急に好転することはないながら、やるだけやって実収入が3倍以上になれば続け、無理なら社長の誘いに乗るのも生活のために止む無しと考えたのです。結果として、半年後も事業が好転する兆しは見えず、社長の会社で世話になることになりました。年収は前の会社の5倍になりました。前の会社では給与を上げてもらうことがきわめて大変であっただけに、まるで次元が違うという感じさえしました。ただ、前の会社の中でしていたことと、独立後にしたことと、仕事の内容は大きく違わないながら、仕事に対する姿勢はまるで違っていました。結局、前の会社の雇用主と、独立後知り合った現在の会社の雇用主は、同じところを見ていたような気がします。つまり独立によって私の仕事に対する姿勢が変わったことが、5倍の収入の差を生んだのだと思います。