退職願を提出してからの転職活動

私は、上場企業に総務部の課長として勤務していましたが、2008年のリーマンショックをきっかけにして会社の業績が悪化しはじめました。それでも、3年くらいは、なんとか資金繰りを持ちこたえさせていましたが、2012年に入ってついに倒産の噂が社内でささやかれるようになりました。噂の出所は、こともあろうに経理財務部の若手スタッフです。会社の資金繰りを見ている部署の人間が、同期入社の別の部署にいる若手社員に、喋ったのが噂のきっかけとなったようでした。

経理財務部の若手社員は、経理財務部長から叱責を受けたのですが、それから2カ月後、彼は退職してしまいました。本気で、会社が倒産すると予測していたようでした。そして、さらに2ヶ月後の2012年の7月頃、大会議室に全社員が集められ、社長から「大幅な経費削減を断行する」と説明がありました。「このままでは、人員削減をしなければならないが、社長の自分としてはそれはやりたくない。だから大幅な経費削減、固定費削減を断行するので覚悟してほしい」という説明でした。そして、詳細の決定は、1カ月待ってほしいとのことでした。

ほとんどの社員が不安感にさいなまれ、仕事に集中できないような有様となりました。1ヶ月後に社長から発表されたのは、大幅な人事異動でした。とくに、私のような管理本部系の社員が技術部や営業部への配置転換を命じられました。ようするに、できない仕事を与えて、自発的に退職させようという意図がはっきり読みとれました。それから、さらに全社員の給与を10%カットするという提案もされました。

私は、自分自身の技術部への異動の発令を受けて、1週間後に退職願を提出してしまいました。自分は新卒で入社して以来、主に法務部と総務部を中心にキャリアを歩んできましたので、エンジニアとしてのスキルはまったくありませんでした。にもかかわらず技術部へ異動ですから、退職を勧奨されているものと同等の扱いと捉えました。もちろん、労働関係の裁判の事例では、私のような人事異動は、会社に対して取り消しを求めれば、取り消しを勝ち取ることができると思います。しかし、会社がもはや倒産の瀬戸際にあるのですから、総務部に復帰しても意味はありません。私は、次の会社が決まっていないにもかかわらず、いまの会社を見切ることに決めました。

さっそく、退職願を出した次の日、会社を休んで、転職活動を開始しました。退職してから3カ月くらいはブランクができてしまうのは仕方がないと覚悟しました。しかし、人材紹介会社に登録するために、出向いてキャリアコンサルタントの方と面談してみると、私の退職動機について「会社の業績が悪くて、まったく畑違いの部署に人事異動をされて、給与カットまで行われたのならば、事情は十分に理解しました」と好意的に受け止めてもらえました。そして、すぐに複数の会社を紹介してもらえたのです。 私は、すでに退職を決定してから、転職活動を開始しましたので、必死でした。必死に、まじめに履歴書や職務経歴書を作成しましたし、書類選考を通過して、気合いを入れて面接に臨みました。面接では、あらかじめ人材紹介会社のキャリアコンサルタントから私の転職の事情について説明がされてあったらしく、転職の動機については詳しくは質問されませんでした。むしろ、私の人柄と仕事のスキルについて質問が集中しました。おそらく、先方の会社の社風や、社長との相性、直属の上司となる面接官との相性などを探られたのだと思います。自分の場合は、法務部か総務部の課長職を希望していましたので、どうしても社長との相性は重要です。

退職願を提出してから1ヶ月後に会社を退職しましたが、その時点では、まだ次の会社は決まっていませんでしたが、1次面接に進んだ会社が2社ありました。そして、無職の期間が1カ月となったとき、1社から採用内定通知をいただけました。結果的には無職の期間は1カ月と2週間ですみましたが、かなりリスクの高い転職活動だったといまは思います。